その1: 修理編

■修理車両・・・’90年.GTR−32.RB26 ツインターボ車・R32型 (実作業:94年6月)
 
■作業内容・・・リアーからの追突にて損傷、リアー左側・アクスルの変形・交換。
          リアーフェンダーは大破交換、インナーハウス交換、その他の損傷は鈑金。
         追突事故保険での修理。リアー足回りAssy後部の全分解脱着
、etc・・・。
         右側面は、ドアー部まで歪みが生じている。
                                                     (記載・平成21年4月)


(1) 停車中に後方よりの追突・大破損傷で、リアーメンバーも損傷が広がっている。
   典型的なオフセット追突。 トランク内部に以外な執着を期待した修理でした。

   つまり、トラックは内部となり、見える部分が多く存在する為です。
   フロアートランクの純正状態の撮影を多く記録で残した。
  

(2) 酷いクラッシュです。
   コナー部分は、完全に修復不可能。
   リアバンパーAssyは全損。
  

(3)リアートランク内部には、ハイキャスのホースやパイプが通り、真下にはガソリンタンクも有り危険な状態だった。
  これだけフロアーに損傷と変形を受けると、修正も容易な作業ではない。 熟練工の腕が頼りだ。

  以外なことに、ガソリンタンクは特殊樹脂製で損壊は無かった。オフセットの位置でうまくかわしたようだ。
  しかし、リアーのタイヤに後部からの衝撃が当たり、アーム類のアクスルがダメージを受け、Assyの骨格交換とした。
 

(4) 車体をリフトして、下部分の左右メンバーを、専用ジグで車体固定する。この時、重要なことは車体を水平に保つこと。
   衝突の有った力方向へ、損傷部分を引き出すことが、基本作業になりますが、瞬間的衝撃は膨大な力となり、通常の応力
   だけでは修正は困難です。 日本には車体修正技能整備士と言う、国家認定試験制度(資格)が有ります。

   こうした修正技巧には、経験も重要な要因ですが基本となる、応力・反作用・物理・金属工学・溶接技術など知識も必要事項
   となり、安心した修正技術をいかに提供出来るかが、設備と指導者などと合わせ会社の重要案件となります。

  不要となる外装パネルなどに引き出しの工具などセットして、引き出し作業をする。 作業を繰り返しながら測定をしています
  が、画像な無いのが残念です。資料はR32(共通)の日産整備マニアルを利用しました。
  不要となったパネルは、切断しますがこの際、接合するパネルとの兼ね合いを検証しながら切開作業をしています。


(5) 今回の車体修正作業では、トランク内部のシーリング(手作業・塗布)を重要案件として記録を撮りました。
  Zにも有るシーリング塗布ですが、GTRなどのようにトランクを持った車両は、ここを見ることが容易なので、気を使い
  ました。 防音・断熱などのために貼り付けある、アスファルト床材にも気をつかいました。 部品として設定が無いので
  形状など事前に型取りをしています。
  
  画像では判るように、ガソリンの吸入口は、変形がひどく交換も検討しましたが、インナーパネルとして大きいく、カット
  使用して、接合交換となると痕跡が残ります。 その為、交換しないで鈑金をいたしました。
  複雑な形状で鈑金と言っても、工具や当て板など熟練工の作業を必要とします。

(6) 黒い色の車体ですが、もっと黒い色に写っているのは、新品の交換パーツです。通常の仮合わせ中です。
  主な交換パーツ(骨格部)は、リアーフェンダー・バックパネル(右テールパネル)の部分です。
  バンパーやテールランプは、外装装飾パーツとなります。足回りは、駆動パーツ。
  
  スペアータイヤの収納部は、通常鈑金です。左側のタイヤハウスは、前側部に損傷(タイヤが当たった)が有るため
  フロアーのアンダーコートを剥離して、室内側から鈑金をしました。 2名の共同作業となります。
  こうした見えにくい場所(走行など、支障は無い)を、きちんと修正していない車両を見つけることが多々有ります。

 (推定結論から検証するに、時間が無い・・・か、中古車での経費節減かな・・・。推測ですみませんが修理とは何かを。)


(7) まだフロアーの鈑金を紹介しますが、外板に比べて凹凸に関し、大まかなプレス部分が多く存在します。
  つまり、鈑金はしづらい部分ですが形状の精度は高くないので、ちゃんと鈑金しましょうと言いたいのです。

  フェンダー内側の鈑金が終了した段階で、外装パネルを接合します。 接合作業画像は有りませんので、あしからず。
  接合は重要な作業です。多くの専用ジグを使用して、個々のヶ所へスポット溶接・IMG溶接など施して行きます。
  いずれ、機会を見て接合作業の秘密を紹介いたします。技能作業公開いたします。
  
  右側の写真で白く写っているのは、ドイツ製のシリカ社製アンダーコートで、硬質のウレタン(塗装可能)ですが、空気圧
  による圧送式です。 このウレタンフォームは空気と化学反応して硬化するため、塗装可能に硬化するまで1日かかりました。
  (現在はこの後に開発された、新素材の3M製(米国製品)タイプ2液硬化の変成ウレタンを採用しています。)
  

(8) 場所は変わって左側のホイールハウス内です。こちら側の損傷は小さいのですが、アンダーコートが捲れている。
  鈑金の必要性は無かったので、表面のサンディング後、錆止めサフェーサー塗布後、通常使用の缶スプレー式の
  アンダーコートを吹き付けた、(黒い部分・画像右側です。作業は左ホイールハウス)。


(9) 画像で白く写っている部分は、下塗装のサフェーサーです。細部のアップ画像が無いのですが、サフェーサー塗装後、
  鉄板の接合部や、段差の部分に先にやや硬質のウレタンフォームをシーリングしたり専用の筆で塗布します。
  その後、やや軟質のウレタンフォームを圧送吹きつけしました。 それぞれドイツ製シリカ社製品です。  
  
  1日放置して硬化乾燥後、ライトグレー色の電着カチオン塗装をしています。

  さらにその後、車体色(KH−3)のダークグレイメタリック塗装を適度に塗装します。必要以上に塗装をしないように、
  注意深く自然体で・・・・。


(10) ここで無傷で使用が可能なのは、ガソリンタンク特殊樹脂製なので損傷やショックから逃れられたようだ。
  無傷と言っても、脱着をしたフェールホースなどは、交換の対象となります。
  
  次はリアーアクスル(駆動部)Assyの交換など検証いたします。
  ここには、パーツの事前検証(発注のため)を記載していませんが、車体からのパーツ脱着時には、早々に
  必要パーツのチャックと発注をしています。

(11) リアーアクスルを支える骨格本体は、修正不可能です。骨格本体は交換です。約5万円ほどの価格です。
  この構造とパーツは、Z32でも同じです。ハイキャスを組み込んだ、当時の日産車を支配した、最新のシステムです。
  
  衝撃に弱い部品構成をしています。個々のパーツは安いのですが、大量のブッシュを使用した部品構成が問題有り。
  ここでも交換中の画像が有りませんね。 損保会社へ提出してしまったようです。

  トラスト製のショックダンパーに損傷が有ります。アッパーリンク部に押されたようですが、事故の瞬間的力がここまで
  及んでいるのが、良く判ります。 3センチ移動していても、瞬間の移動はもっと行っています。約10センチ以上の部品
  移動が有ったと推定されます。


(12) リアフェンダーの交換とい言っても、接合部に重要な技術が集約されています。
  残念ながら、ここでの行程画像が有りませんが、解説は出来ますので。
  
  本来の接合部は、ルーフ(屋根)の後単部とリアフェンダーの上単部が、銅を使ったロー付けと言う作業技術
  が施されたいます。 本来はここから交換作業をするのですが、ルーフの交換でない限り、この部分からの
  交換は、通常では有りません。ここには写っていませんが、サイドガラスがあるので、2ヶ所での接合となる。

  こうした技能は、親方から弟子に伝授してきた業界の実態がありましたが、物理的な工学の裏付けと技能が
  自動車学校などで修得出来る、日本の自動車業界として進化してきています。
  実態作業としては、接合部よりやや下側を切断して、ヘミングと言う加工をしてそれぞれを接合します。
  当然、強度に疑問を生じますが、裏側など補強の鉄板を適度に装着しています。