■修理車両・・・’88年.Z31.300ZR・2シーター日本仕様 走行約26.000km
■作業内容・・・フロントメンバー・左右フードレッジの大損傷
          ラジエターなど、前側の補記類の損傷・交換
         前側全部の交換と全塗装・全分解脱着
、etc・・・。('95年5月頃の修理作業)
        車体の復元と、色替えや欧州パーツの装着してイメージを変えてみました。(記載・平成21年1月5日)


(1) Z31・300ZRの2シーター車。 縁石(歩道)に正面から乗り上げたようで、
   第一メンバーを大破して、左右のフードレッジが下側を向いてしまうほど、
   車体前方がダメージを全体に受けてしまった。
  

(2) エンジンルームは、損傷が無いように
   見えるが、下側のフレームは修復
  不可能なほど、損傷している。
  

(3)画像では、フェンダー後部がドアーと接触しているのが判ります。
  矢印を入れた左右の画像は、エンジンルーム後部ですが、専門用語では、フードレッジと呼ばれる部分の箇所
  で、”くの字”に変形しているのが判ります。ここまで変形が来ているのは、かなりの損傷です。
 

(4) 車体下部分の第一メンバーは、大破して大きく変形しています。 また、左右のタイヤハウスも、タイヤが当たって
   フードレッジの変形にも影響を与えてしまっています。
  VGツインカム・エンジンの外観上は、問題ありませんがこれから、5F・ミッションとAssyで脱着します。

(5) 分解しながらも、細部の写真撮影をいたします。 当然の作業の一環ですが、これをしていないのが、一般
  整備・修理工場の実情です。私は創業当時から、することが当たり前と思っていますが、どうも業界はそうも
  出来ないとのようです。何か不都合でもあるのでしょうか?
  ・・ 時間・カメラ費用・プリント費用・カメラ補修費用などが問題のようです。

(6) 第一メンバーは、エンジン下部に食い込んでいるため、このメンバーは切断しました。
  エンジンとミッション5速はAssyで、足回りと共に外しました。残念ながら、この時のエンジン&ミッションの
  写真画像が有りませんでした。ネガも見つからないので再生は出来ませんが、紛失のようです。
  エンジン本体には、損傷が有りませんでした。


(7) 古い写真からのスキャナー画像なので、スピードアップのため、一部まとめてアップいたしました。
  エンジンルーム内が良く判るかと思いますが、サイドメンバー(左右)の折れ具合がハッキリと写っています。
  
  サイドメンバー(下側の左右)の上部分全体がフードレッジと呼ばれる部分で、左右のサスペンションを支えて
  いる重要な骨格パーツとなります。 複雑に折れ曲がっています。パーツとしては修復不可能な状態です。

(8)エンジンルーム内のフレーム構成が、総てダメになった為、パーツ脱着など配線も総脱着します。
  メインハーネス類は、室内側へ廻っているため、ダッシュボードの脱着とブレーキペダルなども脱着
  いたします。クーラーエバポASSYや、ブローファンASSYも、脱着となります。
  
  こうした画像の記録は、当時、構成図の記録としてや、組み立て時の確認に利用していました。
  配線の記録画像のみでも、この約4倍以上有りました。(一部の掲載)

(9) 前フレームのパーツが、総て脱着したガランとした状態で、フレームの引き出し作業に入ります。
  通常、「粗だし作業」と言われる、フレームの修正作業のことです。
  10トンの油圧能力を持つ、ポートタワー、2台を使用して作業をしています。つまり20トンで引き出しています。
  車体の本体部は、固定していますが、必要以上の油圧は車体への負担も多いので、そこは技術と経験で油圧
  調整をしながら、角度と応力を分散し、本体部が受けたダメージの「粗だし作業」を進めました。

  この作業は、比較的無造作にフックやバイスを、やや乱暴にくわえられる作業です。それは、もう交換するパーツ
  にバイスなど、強力な工具をくわえさせる為、くわえ傷が付きます。しかし、交換するパーツなので安心して荒い
  作業を進められる利点が有ります。時には、鉄板を溶接して、引き出し作業を加勢・補助します。


(10) 初段階の粗だし作業が、終わったら不要となった、第一メンバーや、フードレッジ部を車体より切り離す。
  フードレッジが押されたことで、車体本体の接合部分もダメージを受けたことに対する、修正である。 
  
  ここでの測定作業が写っていませんが、もちろん車体フロアーの対角測定や、専用ゲージによる測定は
  しています。こうしたデーターは、メーカーより発行されています。

(11)大型パーツだけでも、約16点有り。小型パーツを合わせると、全部で28点ものパーツを、計測しながら
  メーカーと同じ手法(スポット溶接・MIG溶接など)を用いて、接合していく。
  文章で書き込みすると、容易なようだが実際は、骨格構成なので、仮付けしながらの確認を必要とする。
  車体下部にあるのは、センターゲージ・メンバーです。大型の定規とノギスの組み合わせ、高価な測定器。

  これは、骨格以外となる外装パーツ(フェンダー・フード・バンパーAssyなど)の仮組立てをして、クリアランス
  の確認やバランス(各パーツの干渉具合や、接合順番を確認)を見るためです。ここの作業は、忍耐と体力も
  必要となります。ここでの作業を手抜きすると、修正のきかない接合をしてしまいます。
  業界人であれば、一度は経験することです。時間に追われて、作業確認を怠り、塗装後の組み立て最終段階
  気づいても遅いのです。

(12)パーツの構成カタログです。部分で抜粋しました。
  パーツ同士の接合は、主にスポット溶接でいたします。メーカーが工場で自動スポット溶接による、大型

  自動接合アームで組み立てが、行われていました。 このため、修理工場でのスポット溶接は、通常
  多めに溶接します。 そうなると、見えるスポットの形状が、増えて不自然になります。

  そこは、パテの成型を使って数量を同じように自然にいたします。まっ、職人のこだわりでしょうか。
  時々、ここでの接合にMIG溶接を使った、板金修理を見かけることが有りますが、そのから不自然な錆
  が発生しています。技術者の能力退化・・低下でしょうか。残念です。
  (注:メーカーの工場でも、スポット溶接が不可能な部分は、MIG溶接を採用しています。ここは、別です。)
  何故、スポット溶接を使わず、MIG溶接を使用するのかは、安易で使用しやすいからです。時間の短縮も。


(13)その他の細部の写真が少ないのが、残念です。
  この頃は、ミノルタの1眼レフで撮影をしていたので、アップの写真はマクロレンズに交換の必要が
  ありました。そこまで、レンズの交換は出来ないので、細部のアップ画像が無いのです。
  
  修正中は、水平の定盤の上での作業をしていたので、常に水平器を確認していました。
  フェンダーの色が違うのは、中古でのフェンダーを利用して仮合わせをしていたからです。
  白っぽく写っているのは、サフェーサーです。塗装の下地や、錆止めとなります。
  
  シーリング(コーキング)をいたします。2〜3種類の材料を使用いたします。シリカ社(独製)の製品
  や、3M(米国製)など性質の異なる材料を、用途に応じて使用しました。純正と同じ形状で塗布します。

  タイヤハウス内は、2液硬化型の3M製アンダーコートを塗布いたします。これ高価ですが最高の材料
  です。その後、メーカーでドブ浸けしたカチオン電着塗装を、色をまねて塗装いたします。

(14)グリーングレイ色のカチオン塗装後、全塗装をする純正色のブルーメタリックを塗装いたしますが、決して
  必要以外の部分まで塗装をしてはいけません。 もう、お馴染みの作業ですが、以前勤めていた、KN社の
  塗装全般を任されていたときから、この塗装方法を考案しました。自分へのこだわりからです。
  通算だと、もう30年以上この塗装方法をしています。外装を被せてしまうと、判らないこだわりなのですがね。
  
  こうした技術や手法は、数人の弊社スタッフへ教えてきましたが、その後、退社して他社の現場でも採用して
  くれているといいのですがね。見えないところへの作り込みが、職人としてのプライドを築くでしょう。
  これも物作りの技法と自負いたします。・・・総括。

(15)エンジンルームの塗装は、終了したのでパーツ・配管・ハーネス・補記類を取り付けていきます。
  前側の大型パーツ(ラジエターやコンデンサーなど)は、総てダメージを受けたので、新品交換します。
  
  エンジン本体へのダメージは無かったので、エンジンマウントメンバーを交換して、再搭載をします。
  左右のフロントフェンダーは、北米仕様の新品交換をしましたが、裏側もこだわり塗装をいたします。
  裏側のフェンダーアーチ付近は、分厚いアンダーコートが塗布されています。もちろん、再現いたします。
  塗布するだけだは無く、縁を筆でふき取ります。ガバー取り付けの為です。実物を見ましょう。

  ここの材料は、当時輸入の少なかったグラスリット社(独製)の水性アンダーコートを採用しました。
  裏側も全面、カチオン電着塗装色を塗装します。 コーナー部は、車体色を塗装します。


(16)やや当時の詳細な記憶が有りませんが、この当時はリアーゲートを装着したままで、塗装をしていました。
  現在は、リアゲートは、脱着して塗装をしています。 理由は、ヒンジの付け根部分に錆の発生が多く見られる
  からです。ヒンジが折れるような事案も出ています。元々、メーカーでも塗装の入り難い箇所でした。
  
  塗装の中段画像は、ブルーMの塗装後、中研ぎ作業をしています。中間塗装となります。
  仕上げ、クリアー塗装の終了は下段の3枚となります。
  この後、前後のバンパーやサイドステップや下回りのグレーM塗装やガラス枠の塗装もしたかと思います。

  現在ここにある写真は、約80枚ほど残っていますが、たぶんもっと撮っていたかと思います。
  当時は、フイルム撮影なのでベタ焼きをしてから、焼き回しを選択してしたと思います。費用がかかるのでね。

(17)完成画像です。フロントバンパーは、欧州仕様を装備しました。ホイールもオプションの16インチを装備。
  
  300ZRは、日本国内のみ発売の車両で、VG30DEエンジンを搭載していた。
  バンパーなどは、2リッターのRB20DETと同じ軽量だが、外装はVG30ターボと、同型であった。
  レカロシート・内張も専用、標準装備となりサスは切り替え無しのタイプであったが、最終型は、VG30ターボ
  と同じく、オートエアコンを装備した。輸出専用だった、16インチホイールは、オプション選択となった。
                                                                   (平成21年2月記)