■トラブル・シューティング <Q7>・・・その1(Z32)・その2(Z31)・その3(S130)

 <症状> ・・・ Z32・Z31・S130などZ系の日産車に多く見られる、ブッシュ類の
          劣化による異音の発生や、車高の傾き・コーナーリング時ロールの
          異常など、ハンドリング直進性悪しなど対策や交換・強化対策など
          記載してみました。

 <解説> ・・・ 車両には、多くのブッシュ類やダンパー・インシュレイターなど緩衝材と呼ばれる、ゴム類が
          使用されています。こうした緩衝材は、経年劣化や使用による疲労劣化などが、見られます。
          代表的なものは、タイヤですね。これはゴムと空気が、路面からの振動を吸収しています。
          
          さて、今回はシャーシー下部で支えている、アーム部のブッシュを検証します。
          乗り心地や直進性の向上を目指しましょう。


画像1  Z32から紹介いたします。
      通常では、10万km位は、それほど如実な劣化は無い
      ようですが、皆さんが雑誌等で紹介された記事を見た
      ことがあるテンションロッドは、8万kmでも劣化・損傷が
      見られました ここで再度紹介いたします。
      下の構成図で色の付いてあるパーツがテンションロッド
      です。車両のフロントタイヤ前側に付いて直進性を安定
      保持させています。タイヤ・サスペンションの上下運動に
      連動して動くため、集音低減の役割として内部にオイル
      を封印したゴムが採用されています。
 

画像2 : この写真では、ブッシュ内部から漏れ出したオイルが見えます。
      ゴム部の劣化によって亀裂が生じて漏れ出しました。判断し易い。
      
画像3 : パーツの構成図からは、ブッシュの単品設定が出ていませんが、
      写真では、このブッシュの打ち換えをしています。NA用とターボ用
      の2種類の設定がありますが、Assyでの交換をお勧めいたします。
      しかし、nismoから出ている強化ブッシュの場合は、打ち抜き交換を
      してください。 nismo:54476-RS590


画像4 : こちらは、同じフロントテンションロッドですが、ウレタン製の
      強化ブッシュを採用しました。(注釈:1)
      写真で判るかと思いますが、2種類のブッシュを使用して、強度
      を内部と外側で変えています。
      米国製エナジー社の製品です。色は黒と赤の設定があります。
      Z32のエンジンは重量級です。ウレタンのブッシュは硬質ですが
      これが結構適合していますよ。      

注釈:1 通常ブッシュゴムの強度・弾力性はJIS規格で#40位となっています。
      これに比較して強化ブッシュは#70位のようですが、ウレタン製は#90位とのことです。
      色々と文献を調べてみましたが、ゴムの弾性組織は劣化と共に組織繊維が切断して、その弾性復元機能
      が低下してきます。ウレタン製品は経年劣化がほとんど見られず、組織の構成が異なります。
      余談ですが、戦前の名機零戦のエンジンを支えていたゴムブッシュも、明治40番の規格品でした。


画像5 : フロントではその他、多くのブッシュが存在します。
       アッパーリンクや、スタビライザーなどがあります。
       あまり知られてないのが、ステアリングのリンケージです。
       参考画像5として記載してみました。ここは、オイル漏れなど
       で、通常のゴムブッシュが柔らかなってしまい、固定仕切れず
       位置がズレてしまいます。 (注釈:2)
       その場合、コーナーリングのたびに、ハンドルの中心がズレ
       たり、直進性も悪くなります。これ以外とあるよ。プロの方へ!

       画像6・7 はスタビブッシュとそのエンドブッシュのウレタン製
       です。

注釈:2 これらの周辺のブッシュは、エンジンのオイル漏れや、定番のパワステホースなどからのオイル漏れで
      濡れたため、ブッシュ類やインシュレーターなどがふやけて膨張していたり軟弱になっています。
      あまり気にならないようですが、結構症状が見られます。


画像8 : アッパーリンクなど、nismo製の強化ブッシュです。
      強化ブッシュを組み込んだ純正仕様のパーツも販売されて
      います。また、一部には強化されてたアームになっています。

      変形や破損をしないように、圧入をする高度な作業です。
       
画像9 : ブッシュの組み替え中の作業画像です。
      こうした油圧プレスなど特殊工具も必要となります。

      これらの作業では、古いブッシュを打ち抜く方が、面倒
      な作業で、なおかつ不用意な打ち抜きや、加圧を加える
      と、アーム側の変形や破損を誘導します。
      経験と熟練工の作業となります。

      
アーム類・キャリアには、洗浄・防錆び塗装を施しました。
       


       

画像10〜13 : リアーのリアーアクスルAssyですが、4個あるメイン
         フレームキャリアのブッシュから、封印されているオイルが
         漏れ出しています。別名デフメンバーとも呼ばれる部分の
         重要なブッシュです。(注釈:3)
         画像11は、そのキャリアAssyを脱着したところです。
         画像12で、上から見たその部分です。完全にブッシュが
         抜けてしまいその機能を果たしていませんね。
         画像13は、交換が完了していますが、赤いのはウレタン製
         のブッシュ類です。キャリアには、防錆び塗装をしました。
注釈:3 ここのブッシュは、前側に記載したステアリングリンケージのブッシュインシュレーターと同じく車体の
     直進性など運動性能に影響します。たとえばコーナー曲がった直後、大きなG(遠心力)が加わりブッシュ
     の中心軸がズレます。そうすると立ちあがった時、直進方向が変わってしまい、結果ハンドルの向きが
     変わって直進性を保とうとするはずです。
     この部分に金属製のシムを挟んで固定するパーツも出ていますが、床下からの突き上げ異音や、劣化
     したままでの固定は、意味がありません。


画像14〜17 : こうした作業での付帯作業があります。
         強化ではありませんが、リンクパーツ(駆動)やオイルシール
         などの分解して交換しましょう。
         その他、今回は伸びたサイドブレーキのワイヤーなども交換
         しました。
         こうした付帯作業は、どんな場合でも必ずありますので、修理
         を依頼された工場と良く相談してくださいね。


       

      

   PSの追伸 :こうした作業やトラブル情報・対処方などご同業者さまにも閲覧していただいているとの
           ことを聞き及びました。
           大変ありがたくもあり、責任を感じます。献体の車両は、ご使用状況などで多くの変化が
           ありますので、あくまでご参考にしてください。
           今後も依り良い情報をご提供出来るよう勤めてまいります。
           ありがとうございました。



                                                     (平成19年2月記:Hiro)