■トラブル・シューティング <Q4>

 <症状> ・・・ Z32のタイミングベルト切れ。エンジンは?

 <解答> ・・・ タイミングベルト切れを検証し、レポートいたします。
          このZ32に限らず多くの車両にタイミングベルトが存在します。 このような機構は静粛性や軽量
          などから多くに採用されましたが、トラブルや交換費用など問題が多く修理・検証してみます。  
          またオーナーからは、日産の工場では交換となり費用を約90万ほどと見積もりされたそうです。
          それよりも新車を勧められたのが、気に入らなかったようでこちらに依頼されました。
          こうした場合、修理はエンジンを開けてみないと判りませんが、ほぼ修理は可能です。
          中古のエンジンが安く購入可能な場合は、Assyでの交換も検討いたします。
          

写真1 : さて今回はやや当初の見積もりを誤った・・。
       それは、コンプレッションを測定したところ右バンクが問題
      無く、左バンクが2番・4番がゼロで6番が12kg/pだった。
      このため左バンクだけを分解して直そうかと思ったことです。
      つまりエンジンを降ろさずに修理を遂行しようと考えていまし
      が、ヘッドを外すためにはエンジンを降ろさなくてはならない
      事に気づくのが・・・失態・失態・・ 。

写真2 : まっオーナーには事情を説明してエンジンを降ろすことに
      いたしました。 Z31のVGエンジンは降ろさなくても可能で
      多くのエンジンは可能だったとの潜入感が憶測を・・・。
      ごめん!
      ちなみに、ベルト破損時の走行距離は約12万kmでした。
      Z32のタイミングベルト切れは5台ほど見てきましたが、一番
      走行の少ないので78000kmを聞きました。これは高速走行中
      であったためエンジンは完全にお釈迦になりました。
      中古屋さんから相談を受たのですが たぶん何度か中古屋店
      を回っているうちにメーターを改ざんされたかと思います。
 
       
      
      
      


写真3 : あまりエンジンの手入れは良くなかったようでした。
      でも、サーモスタットは交換してあるようでした。 赤い色は
      日産指定のシーラントガスケットです。組み立て工場では
      黒のシーラントを使用しています。
      ちなみに、弊社ではライトブルーのロックタイト社製を使用し
       ています。

      この後、エンジンを降ろしました。
      

写真4 :2番のシリンダーヘッドです。
      この状態ではカムシャフトは外してあります。
      本来ならば4個のバルブは全閉状態なのですが、
       やや大きいインテークのバルブは開いています。 これは
      バルブが開いた状態時にベルトが切れ、ピストンでバルブを
      突き上げたためバルブが曲がり、閉まらなくなった状態です 。
      

写真5 :4番のシリンダーヘッドです。
       2番と同じような状態になっていますが、エキゾースト側の
       バルブが開いたままになっています。
       この状態のままなのでコンプレッションはゼロだった訳です。
      
写真6 :6番のシリンダーヘッド、問題無く全閉でしたがカーボンの
       付着がひどい!
       このヘッドは完全分解・洗浄します。
       
      

写真7 :4番のバルブはヘッドの燃焼室を傷つけてしまいました。
       写真で傷があります。ヘットはアルミ合金なので隆起も
       していました。修正します。

写真8 :かなりのエンジンオイル・スラッジが付着しています。
       画像では、カムが外れています。丸いのはバルブリフター
       です。 濃い茶色は総てスラッジです。

写真9 :そのカムと、カムブラケット・ボルト、リフター6個の画像です。
       ちなみにこのZ32は平成3年車です。
       カムは、IN側もOUT側も同じ状態です。
       本来は左右のバンク(ヘッド)をオーバーホールした方が
       いいのですが、予算との兼ね合いで損傷のあった、左側のみ
       となりました。
       


       

写真10 :専用工具を使用して、各全部のバルブを抜き取ります。
       損傷の無いバルブも全部交換します。
       このバルブはシャフト部が中空となり、金属ナトリウムが
       内臓されています。 大変高度な技術が取り入れられて
        いますね。
       (航空機・・あのゼロ戦も使用・・。)

       
       

写真11 :丸く見えているのが、排気側のバルブシートのリングで、
        その縁に半円形の傷が見えます。
        傷や損傷は、バルブ・バルブシート・バルブガイドなど
        損傷を受けた範囲を、順次検証して確認をします。
       


写真12 :バルブシートの縁にある傷のアップです。
        目視で見る所だけでなく、器具での測定や経験も必要
        となってきます。
       

写真13 :左側はEX側の曲がったバルブです。 右側は新品です。
        高度な技術で製造されたバルブですが、意外と安価です。

   
ちょっと工学技術を調べてみました。
    この金属ナトリウムを内蔵したバルブは、驚くなかれ
    戦前からあの名機ゼロ戦にも採用されていました。
    航空機の技術なのですね。空冷であったゼロ戦は、
    バルブの冷却を目的としてこの技法を採用していました。
    車で採用したのは、もう推測が付きますよね。そっ、空冷の
    ポルシュエです。たぶん1967年かと思います。
        

       


写真14 :この左ヘッドは、洗浄のため専用洗剤にて洗います。
       パーツは総て、無公害なこの洗剤にて洗浄しました。
       残った作業は、洗浄後にいたします。
       (加温洗浄)
       
写真15 :バルブを外したヘッドの状態です。
        (まだ洗浄はしていません。)
       

写真16 :もう洗浄後のヘッドです。
       バルブは全部新品で交換しています。
       この状態は仮組です。
       

       
写真17 :ヘッド全体の全景。
       バルブの色が違うのは、素材の違いから。