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■エアロパーツに付いて、最近の事情と素材の解説  06年10月記載


そもそも、エアロの部品(パーツ)とは・・・。     

 今更、あえて空気抵抗を低減するために、開発されたエアロパーツに付いて解説は必要無いと思いますが、
ここに多少、歴史的背景と所感を述べてみたいと思います
 1960年代頃から、米国内でのモータースポーツの高騰と人気から車体に対する空気抵抗の実験や模索
が、如実になってきました。 本来、こうした空気の抵抗は航空機の技術が多く転用されていました。
戦時中もあ名機"零戦"でも、空気抵抗と燃費は海軍の必守課題でした。
 
 すこし割愛しますが、米国内で加熱したモータースポーツの発展は目を見はる物が多く、有名なCANーAM
や、セブリング、SCCAなど(もちろんLeMansもね)でも多くの最新エアロが登場しました。
 なかでも時代を代表するかのような異端児?(私は大好き)のシャパラルは、驚くべきエアロをレースに登場
させ、多くのレース関係者を驚かせました。あの名車シャパラル2Eでした。リアーウイング付き。

 その後、TOYOTAやNISSANでもこれと類似したリアーウイングが登場しましたね。
もうこの辺からは、多くのNISSANやレースファンの方は見た事があるでしょう。

 ・・・さて、これから本題に入ります。最新の業界事情ですね。・・・

 これって本当にエアロパーツなの??その効能は??など逆空気抵抗になりそうなパーツが多く存在する
のが、現在の風潮かと思います。 そっ、カッコ良くて他車より目立てばいいのが現状でしょう。
ここで賛否を論議することはありませんが、個々の選択は、個人の見感の問題でしょう。あっ財布の中身も・。

 FRPパーツ・素材について・・・。
 F(ファイバー・繊維)とR(レインホース・補強)とP(プラステック)の略ですが、そのベースとなる素材は、ガラス繊維
です。総てではありませんが、通常FRPと言えばこのガラスファイバー製と思っていいでしょう。
 安価で扱いや加工がしやすく、真っ先に自動車レースで登場しましたね。
失礼ながら、1968年富士スピードwayでの大クラッシュをしたポルシェ910は原型を留めずバラバラになっ
てしまいました。車体はFRP製でした。
 FRP製は製法に幾つかの技術がありますが、簡単な製法では多くの設備投資が必要無く、扱い易いの
が特徴で多くの日本のメーカーではこの商品がほとんどです。

 長所: 加工し易く、軽量で丈夫で塗装もし易いことです。また薄く成形できるのも特徴です。

 短所: リサイクルが出来ず、ひび割れやコーナー部の破損は、修理し難いことです。
      つまり、ガラスの繊維でその結合をしているため、部分が切断されてしまうと、その再生が不可能
      に近いことです。また、現場の作業者は、手首の皮膚に細かいガラスの繊維が付着して、かゆく
      なることかな。細かな成形は不可。輸送中の破損もあり大きな箱が必要。


 ウレタンパーツ・素材について・・・。
 この素材は、以外と古くから自動車のバンパーなどに使用されてきましたが、日本ではここ数十年の出来
でした。米国を代表するコルベットスティングレーは、その車体がFRPです。その後、出てきたファイアー・
バードは、大変斬新でした。そのデザインを支えたのが、前後のバンパーを鉄のメッキ製から柔らかい素材
のウレタン製にしたことです、大変身でした。
古典的な鉄バンパーには、加工に限界があり、また自動車の安全基準が歩行者を守る基準が重視され、
この新素材が導入されたかと思います。 その功罪にも貢献し、新しい自動車のデザインの発展にも寄与
したと思います。
 罪とは、こうした素材に対応出来なかった、補修業界での塗装と修理でした。
多くの修理工場で、こうした素材のバンパーの補修・塗装に悩まされたものですね。 大型バンパーになっ
た、Z31('84年〜フェアレディZ)は、修理塗装の剥がれが各地で発生しました。
知識不足による下処理の適正不足もそうですが、補修用の塗料の開発も遅れていました。
その為か、当初は未塗装の素材のままが多く、のちに表面の劣化によって白く変色したりと見栄えが悪く
なってしまいました。(S130型のバンパー前期・後期共になど)

現在はこの素材の取り扱いも熟知され、補修用の塗装材料も改善と進歩が見られます。
FRPと違い、軟質性のある塗料とその取り扱いが必要ですね。

おっと、その素材はウレタンフォームと呼ばれる石油原料からの科学合成素材です。
その種類は様々で、解説しきれませんが日々いろいろなところでその名前を聞いているかと思います。
塗装でもウレタン塗装と言う単価の高い塗料が出てきましたね、この素材のためだけだは無く、その高性能
から自動車メーカーでも一部に使用されています。安定した優れた素材ですが、経年でやや収縮します。
水には沈みます。燃えると黒い煙を出します。


 長所: 
形成・加工し易く、柔軟性に富み、衝撃に強く破損し難いことです。修理は可能です。
      一時期、当社でもその修理材料に良いものが無く(国産では)、ドイツ製や米国製を使用していま
      した。ヒーターを使用したウレタン製の溶接や、専用パテです。現在も米国製を使用しています。

 短所: リサイクルが出来ず、FRPに比べやや重くなります。
      素材の単価は安いのですが、生産メーカーとしては初期設備投資が高額となります。
      塗装については、現在はまったく問題は無いと思いますが、不心得な塗装屋さんだと、どうかな。
      ウレタンの軟質塗装は、乾燥も遅く配合はやや面倒で作業性は悪くなります。下地処理のサー
      フェーサーにも同様な塗装技術が必要となります。
      (やばいかな、ご同業者に敵を作るかな・・でも技術の情報公開は、お客様ばかりでなく業界関係
       者の皆様にも警鐘となるかと思います。)


 PPパーツ・素材について・・・。
 
PPはポリプロピレンの略ですが、ウレタンと同じく石油製品です。
こちらも古くはドイツのゴルフの前後バンパーや内装の素材として多く用いてこられました。
FRPの長所とウレタンの短所を改善・取り入れたような物で、軽量で柔軟製(ウレタンよりは劣る)があり
リサイクル出来る現在のエコ環境から、メーカーでも活用するようになりました。
単価は判らないのですが、設備投資は同じで一般的には大企業でしか出来ない形成製品となります。
水に浮き、燃やしてもほとんど煙は出ませんが、強い特有の臭いが出ます。

 長所: 柔軟性に富み、衝撃に強く破損し難いことですが、強い衝撃には割れとして発生します。
      ウレタン製品ほど軟質ではありません。修理は可能です。またリサイクル可能です。
      細かい細工が可能で、ピンやフック部の成形が容易に出来ます。経年の劣化も少ない。
      
 短所: 塗装の下処理はウレタン製品よりもより面倒です。
      熱にも強く、これと言って短所は見あたりませんが、やや堅いので内装パーツでは、コーナー部
      など手を怪我することが、時々あります。内張の分解時にね。現場より。

 カーボン(炭素繊維)素材とABS樹脂について・・・。
その他、カーボン製品が近年のレーシングカーを作る素材として注目を浴びていますが、製法により
ドライカーボン製やウエットカーボン製があります。カーボン繊維は、ガラス繊維に比べ、1/10の軽さ 
です。 さらにはケプラー製など着色された美術品のような素材も多く市場には出回っていますね。 

カーボン繊維やケプラー繊維は、特殊な素材で国内では、2〜3社のメーカーでしか製造出来ません。 
これらの素材は、航空機の素材となり、また軍事転用出来ることから材料の輸出など制約がある。 
特徴は、その繊維素材が透けて見える(結合材に透明樹脂を使用)美しさからでしょう。

ABS樹脂製品は、あまりエアロパーツには存在しませんが、プラモデルの素材と同じです。
ドアミラーなどは、代表各です。細かい形成がし易く空洞など3次元成形に向いています。
ABSは水に沈み、燃えると濃く太いススが出ます。


 素材の比較・画像での解説 HOW TO WELD Automotive Plastics

1: 画像1は、コーナー部が破損してしまった、FRPのチンスポ
  イラーです。こうした強度のかかる部分の補修は、ほぼ不可能
  です。日本製は薄い成型で贅肉が無く、美しいのですが耐久性
  がありません。その点、米国製は肉厚があり強く、やや無骨です
  が、修理も可能な場合があります。
  
  日本製: 成形の肉厚、約2〜3mm位。軽量。日本製品の主流
  米国製: 成形の肉厚、約3〜4mm以上。重い!
       近年の米国製には薄いFRP製品もありますが、特徴
       は、日本製と同じになります。

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2: ウレタン製のスポイラー(米国・Kaminari製/Stillen製など)
  驚くほどの柔軟性に富み、商品の取り扱いも安心です。
  専用の柔軟塗料やサフェーサーなど、塗装には特別の扱いが
  必要となります。
  また、夏場と冬場では膨張係数の差が大きく、固定などには
  知識や熟知が必要となります。これは以外と重要です。
  ようやく日本の市場でも少し出てきましたね。
  
 
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3: PP製のサイドステップ(画像は日産の純正パーツ)
  ウレタン製よりは、やや硬質ですが、軽量と精度の高さは優良。
  専用の柔軟塗料やサフェーサーなど、塗装には特別の扱いが
  必要となります。ウレタン製より面倒。
  高熱処理や高圧での形成など設備投資が高額となる。
  日本のnismoはFRP製で、米国nismoはPP製です。何故なの?
  (米国nismoは、カナダ製。パーツによってはメキシコ製有り)
  


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