■修理車両・・・’91年.Z32.ターボ車・4シーター日本仕様  (実作業:94年2月) 
■作業内容・・・左ドアー・左リアフェンダーとサイドシェルの損傷
          リアーゲートは鈑金、その他の損傷は交換。ルーフにも変形有り。
         車両相互事故保険での修理。内装を含むリアー後部の全分解脱着
、etc・・・。
         左側面は、パール塗装なので全側面塗装となり、ルーフ・リアゲートも同様
                                                     (記載・平成21年3月)


(1) 側面・フロアー・ルーフの損傷で、内部のパネルにも損傷が広がっている。
   Frontフェンダーや、ドアーパネルの交換は、単体パーツなので容易な作業だが、
   フロアーのサイドシェルや、リアーフェンダーの交換は、モノコックボディーを切断する
  工法となるので、修正技術の高い熟練作業となる。
  

(2) 側面のガラスは、割れている。
   リアゲートにも大きな凹みがある。
   リアバンパーに損傷は無い。
  

(3)内装部にまで損傷が広がっている。後ろの内張は、亀裂があり交換となった。
  T−バールーフの部分も捻れが生じていた。ひずみ程度だが、ドアーを支えるBピラーに損傷があるため、発生した。
  リアーのサイドガラスは、損壊している。ガラスに直接に物が当たったのでは無く、Bピラーの歪みによるショック損壊です。
 

(4) 車体をリフトして、下部分の左右メンバーを、専用ジグで車体固定する。この時、重要なことは車体を水平に保つこと。
   衝突の有った力方向へ、損傷部分を引き出すことが、基本作業になりますが、瞬間的衝撃は膨大な力となり、通常の応力
   だけでは修正は困難です。 日本には車体修正技能整備士と言う、国家認定試験制度(資格)が有ります。
   こうした修正技巧には、経験も重要な要因ですが基本となる、応力・反作用・物理・金属工学・溶接技術など知識も必要事項
   となり、安心した修正技術をいかに提供出来るかが、設備と指導者などと合わせ会社の重要案件となります。


(5) 4の解説画像で、車体修正の作業をしています。左衝突方向へ引き出しながら、上へも引き出しています。
  画像には無いのですが、内部からもポートワパー(油圧機)で、内側のフレームを押し補助をしている。
  
  画像では、内部の鉄板にも損傷が有るのが良く判ります。このは通常の鈑金処理をしました。
  サイドのフレームは、新品パーツを部分使用して、交換しました。 交換が決まっている外装パーツやフレーム
  などは、荒だしの作業となりますが(鉄板に直接ジグを溶接などするため)問題は有りませんので。

(6) 今回の画像は、かなり少ないのですが当時、損保会社へ提出したため残りの資料写真を掲載しています。
  交換フェンダーの接合部の画像や、スポット溶接作業などお見せしたかったのですが、別の機会に掲載いたします。
  
  こうした作業自体は、大凡の鈑金工場で可能な作業ですが、問題はその後の正しい処理・処方がなされていない
  現実が有ります。 処理に的確さを欠くと、その後の耐久性に歪みや錆の発生など生じさせることも有ります。
  あまり公にはしたくないのですが、日本の鈑金業界の技術向上のためにもここに警鐘を発信します。


(7) 塗装作業は、パールホワイトなので色合わせが難しい高度な調色をしいるため、側面全塗装となります。
  下面のフロアーアンダーコートは、独製の材料を使用していますが、当時はまだ補修用としては、普及していない
  高価な材料で、日産の下請け工場さんからこの材料や手法に付いて問い合わを受けたことが有りました。

  その作業実車も見ましたが、当時はアンダーコートと言えば、缶スプレー式の物で内部にフロンガスを使用しているため、
  塗装表面にガスが抜ける気泡の穴が生じ、黒い斑点のような面になり補修塗装のクレームとなったと、言っていた。
  
  当社の塗装技術などは、別のページにも詳細に掲示してありますので、そちらをご覧ください。
  

(8) 前期のZ32は、やや黄色未のあるパーツホワイト塗装ですが、当時のアンダーコートは、新材料であり
  メーカー側が何故採用したか(表面素材として)判りませんが、古くなると黄褐色に退色するこどが、確認
  出来なかったのでしょうか。サイドフロアーの石飛びからの傷付き防作として、採用されたようですが。

  初期のZ32は、このアンダーコート(ストーンガード)が粗い表面で、ワックスや汚れが付着し、白い塗装色
  には問題視されるとこになりました。(北米仕様には、単色のホワイトが有りました)

  この頃、私が見た初期のプロトタイプ(試作車)には、この素材の使用は無く、バンパーも下回りが平滑な

  面をしていましたよ。 こうした素材にも歴史は有ります。300ZRの頃からプロテクターとして、厚手のシール
  が有りましたね。 もっとも、このシールも古くなると黄色く退色して、さらに古くなるとひび割れが発生します。
  


(9) 7と8の画像で塗装作業は完了しましたが、まだ内側の塗装仕上げが残っています。
  内部の内張や配線など、鈑金修正中に外してありましたが、画像が無いのが残念です。あったはずなのですが、
  たぶん保険会社に提出したので無くなったと思います。  
  
  画像では内部をマスキング・紙貼りをした画像も有りませんが、塗装後の配線など組み付け後の最終画像となって

  います。 当社内では、「両面鈑金」・「両面塗装」・「両面修正」と言う言葉があります。これは、見えないところも
  元通りに直すと言うことを意味しています。
   ・・・ ”事故だから仕方がない!”、、、、”此ぐらいは!”、、、では、当社は納得しません。


(10) 最終完成画像はこれが最後の資料となります。
  フェンダーの車体接合部分をアップしてみました。残念ながらスポット溶接の接合部を見ていただきたかったの
  ですが、もうサンディング処理・マスギング・塗装と終了しています。 溶接時の焼け跡など、洗浄・塗装でもう
  交換した痕跡も、微細な痕跡も修正してあります。
  (近年、こうした内側の作業・処理を全くしていない工場が有ります。申し訳ないのですが、ディーラーさまの下請け
  工場での完成車も見つけました。内部処理は、全くしてありませんでした。忘れた?そんなことはあり得ない!)  
  
  配線の一部をガムテープで押さえて有りますが、これはメーカーの仕上げと同じにしてあります。
  この後内張を付けて、日常の使用をしているうちに、通常の汚れが付着して修理跡が判らなくなります。

  見えなくなる内部のヶ所なので、それほど神経質にならなくてもと思われるかも知れませんが、それでいいので
  しょうか。自分の車だったら、僕はイヤですがね。
  古い資料ですが、かえって昔からこだわった修理を実行していた事実をご判りいただけたかと思います。

  熟読をありがとうございました。  解説:Hiroはたなか